それもひとつの日常

錬後、部室にて――

菊: 「ねー大石ぃ、手塚って何かあった?」
大: 「? いや、何も聞いてないけど、どうかしたのか?」
菊: 「それがさー、朝錬前に見ちゃったんだよねー、手塚が携帯で真剣に謝ってるトコ」
桃: 「部室に入ったら、部長が壁に向かって喋りながら頭下げてたンすよ。俺もうビックリしたっすよ、部長、どーかしちまったのかなって」
乾: 「いわゆる反射運動だな。話し声が耳元でするから、つい目の前で相手と話しているような錯覚がして、その結果、言葉に動作が伴ってしまう」
河: 「あ、それわかるよ。俺もよく道端とかでうっかりやっちゃってさ、アレ人に見られてたりすると結構恥ずかしいんだよね」(苦笑)
リ: 「――かなりカッコ悪いっすね」
河: 「真顔で言うなよ、越前……」
菊: 「手塚は全然ふつうだったよな、桃?」
桃: 「そうっすね」
不: 「案外、頭を下げてた自分に気付いていなかったんじゃない?」
大: 「そうだな、無意識ってこともあるし」
桃: 「そうっすかぁ? でもあの時かなりの角度で曲ってましたよ、上半身」
リ: 「いっそのこと本人に訊いてみたらどうっすか、ねえ、部長?」(振り返る)

一同:「…………え?」(リョーマに釣られて奥を見る

手: 「…………」
大: 「手塚、いつからそこに……」
手: 「最初から居たんだが」
海: 「気付いてたなら早く言え!」(殴
リ: 「痛てっ! ちょ、何するンすか海堂先輩!」
海: 「うるせぇ!」

  チャラララ〜チャッチャチャラリラ、チャラララ〜♪

菊: 「あ。携帯鳴ってる」
手: 「はい。手塚です」
不: 「あ、俺だけど」
一同:「――――え?」(ギョッとして不二を見る
手: 「何だ?」
不: 「うん。あのさ、父さんが手塚が87分署シリーズの新刊を読むのなら、今度の航空便で一緒に送ろうかって言ってるんだ、読むかい?」
手: 「いいのか?」
不: 「ついでだし構わないよ。ペーパーバックだしね」
手: 「じゃあ、よろしく頼む」(ぺこり

一同: (「あっ! 頭下げた!」(←ココロの声
桃: 「――て云うか、不二先輩、そんなに部長が電話しながら頭を下げるトコ見たかったンすか……」
菊: 「――て云うか、面と向かい合いながら、わざわざ携帯で話すこともないんじゃ……」
リ: 「真顔なのがすごいっすよね……」
乾: 「手塚だからな」
大: 「はは……」
不: 「……ふうん、手塚も着信音の設定してるんだ」

一同: (「アンタ引っ掛かってるの、そこかい!」(←ココロのツッコミ

 ――ちなみに87分署シリーズは、エド・マクベイン原作のアメリカンミステリです(ね、ぶちょー?:笑)。

2007/02/07