「天気にな〜れ」

活の帰り――


桃:  「〜♪ 〜♪」
手:  「――桃城。暗いところで口笛を吹くと蛇を呼ぶから止めろ」
桃:  「へ?」
河:  「ソレって迷信じゃないの? ほら、よく言うじゃない」
不:  「“夜に爪を切ると親の死に目に会えない” ――とかね」
リ:  「なんで?」
不:  「さあ?」(微笑み返し
リ:  「さあ……って、不二先輩!」
乾:  「越前、迷信にツッコミはタブーだ。そもそも迷信とは、“――だって昔からそう言われているから”と云う、根拠考察全否定の姿勢で先祖代々伝えられてきた出所不明の民間伝承だからな。何も考えず、言われたまま黙って受け入れるのが、正しい迷信との付き合い方だ」
大:  「……どうした海堂? 黙り込んで」
海:  「……俺、毎晩フロあがりに足の爪切ってるんスよ……」
大:  「大丈夫だよ、海堂。不二の言ったのは、ただの迷信なんだから」
海:  「そ、そーっすよね、迷信っすよね!」
桃:  「けけ。気にしてやんの」
海:  「うるせえ桃城!」
菊:  「俺さー、姉ちゃんに“食べてすぐ横になると牛になるわよ”ってしょっちゅう言われるンだよねー。でもさ、満腹になると眠くなるじゃん? それでつい寝ちゃうんだよねー」
河:  「あ、ソレ、俺もオヤジに言われたことあるよ」
リ:  「なんか変なのばっかりっすね、迷信って」
手:  「そうでもないぞ。てるてる坊主のおまじないとか、役に立つ物だってある」
不:  「役に立つって手塚……、もしかして、てるてる坊主を作ってるのかい?」
手:  「ああ。大事な試合の前の晩には必ず自室の窓のところにぶら下げている」
桃:  「マジっすかっ!?」(声、裏返る
手:  「雨が降ったら試合が出来ないじゃないか。お前たちは作っていないのか?」
リ:  「作るわけないっしょ!」(一同、うんうんと同意
手:  「なんだと!? そんなことで、明後日の練習試合が雨天中止になったらどうするんだ!」
菊:  「どーするったって……」
手:  「よし。明日のミーティングは、部員全員でてるてる坊主作りに決定だ」
海:  「ええっ!?」
大:  「明後日の練習試合はドーム屋根のコートだから、天気は関係ないんだが」
乾:  「そうだな」
桃:  「ちょ、先輩っ、だったらてるてる坊主を作る意味ないじゃないすか!」
リ:  「そうっすよ!」
不:  「おもしろいからいいじゃない」(にっこり
桃・海・リ:  「………………」

 ―― 翌日、男子テニス部の部室の窓には、個性豊かなてるてる坊主がずらりと鈴なりにぶら下がったと云う……

2007/11/17