赤也:「早くしてくれよおっさん!」
オヤジ:「F1のタイヤ交換じゃあるめぇし、たかが自転車のパンクぐれぇで騒ぐな坊主」
ブン太:「なあ、まだかかるんなら、俺、そこのコンビニ行って来るぜぇ」
仁王:「わしも行くなりー」
ブン太:「おう。行くなり行くなり〜」
真田:「行くなら走っていけ! それから赤也! もっとペースを上げんかっ ずっと最後尾ではないか!」
赤也:「んなこと言ったって……先輩たちが速すぎなんすよ。
ママチャリのくせになんなんすか、あの非常識な速さは」
幸村:「でも確かに赤也と仁王はちょっと遅いな。
ペースダウンしないように、これから先は柳と真田の後ろに付けるか」
赤也:「え――――っ!!」
ジャッカル:「え――っ! じゃねぇよバカ。2度も置いてかれそうになりやがって。
おかげで俺はお前らを探すのに余計に走らされたんだぞ!」
柳生:「第一、迷子になって困るのはアナタなんですよ。
目印もない、道も知らないこんな所からひとりで帰れるんですか?」
赤也:「そりゃまぁ……」
真田:「目印か……ふむ」
柳:「弦一郎?」
真田:「いや柳生が言うように、今回のような長距離の自転車遠征の場合、
先頭を走る俺たちには、後続のために目印をつける必要があるかも知れん」
柳:「その俺たちというのは、俺も入ってるのか弦一郎……?」
柳生:「……そういう意味で言ったわけじゃないんですが」
真田:「目印か……目印……」(聞いてない
赤也:「――真田副部長、さっきから向かいのパチンコ屋を睨んだまま動かねーんすけど、なに見てんすかね」
ジャッカル:「知らね−よ。おい引っ張るな」
柳:「――柳生」
柳生:「ええ。マズイですね。よりによって新装開店の花輪にのぼりまで立ってますよ」
ブン太:「おーい。パンクの修理は終わったかぁ? 補給用にキャラメル買ってきたぜー」
真田:「よし決めた。“常勝立海”と“全国制覇”の2本の旗印で決定だ!」(きっぱり
柳:「………………2本」
ブン太:「何の話だよ?」
柳生:「仁王君! 切原君! 二人ともこれから先は真田君にぴったりとくっついて走りなさい。
なんだったら追い抜いたって構いません。とにかく絶対に遅れるんじゃありませんよ!
いいですね!?」
仁王:「なんじゃ突然?」
幸村:「真田がね、お前たちが遅れても俺たちを見失わないように、先導の旗印を作るそうだ。
“常勝立海”と……あとなんだった?」
真田:「“全国制覇”だ!!」
仁王:「………………」
赤也:「………………」
ジャッカル:(二人の肩をわし掴んで)「――死ぬ気で走れ、お前ら」
――――後日。
不二:「――でね、信号待ちをしていた僕の目の前を、
立海のメンバーたちが原付バイクを蹴散らして走っていったんだ。びっくりしたよ。
アレ、60キロぐらい出てたんじゃないかな」
手塚:「ほう……?」
不二:「ママチャリで60キロのスピードって、ちょっとすごいよね。
……真田が先頭だったんだけど、何だかみんな鬼気迫る表情(かお)で必死にこいでたな」
手塚:「そうか。……ところで不二」
不二:「なんだい?」
手塚:「ママチャリって、なんだ?」
不二:「………………」(ニッコリ
2009/02/04