部室にて−−
鳳 :「――へぇ、じゃあ日曜日は家族でイチゴ狩りに行くんですか。いいですね、美味しそうで」
宍戸:「まぁな。もぎたてだから甘(うま)いことは甘いんだけどよ、イチゴ狩りのイチゴ畑ってビニールハウスだろ? アレ暑くってよ」
岳人:「何だよ宍戸、イチゴ狩りに行くのかよ? お前ってイチゴ好きだっけ?」
宍戸:「うっせーな! おばあちゃんが好きなんだよ!」
ジロー:「おいC−! うれC−! ビタミンC−!!」
忍足:「うるさいわジロー。しょーもないこと言うてんと、はよ着替え自分。頭ボタボタやないか」
跡部:「(ガチャ) ――おいジロー、お前またユニフォームをシャワー室に脱ぎっぱなしにしやがっ……」
ジロー:「あー、あとべー聞いて聞いて! オレもイチゴ狩りしたことあるんだぜー! でも蛇イチゴとか採っちゃってさー」
跡部:「てめー、オレ様の話を聞きやがれ!」
岳人:「蛇イチゴ? なんだそりゃ」
日吉:「知らないんですか先輩。野苺の一種ですよ。食べたって別に美味しくもありませんけど」
宍戸:「蛇イチゴって毒苺じゃないのか!?」
日吉:「違います」
宍戸:「なんだよ、嘘かよ……クソ」
跡部:「……さっきから何の話してやがるんだ」
岳人:「だからイチゴ狩りの話だよ」
跡部:「イチゴ狩り? ……ああ、ピクニックの野苺摘みか」
岳人:「野苺じゃねーよ! イチゴ狩りだっての。幼稚舎ン時に遠足で行ったろ?」
跡部:「行ってねーよ。オレは中学まではイギリスだ。なぁ樺地」
樺地:「ウス」
鳳 :「それに先輩、幼稚舎の遠足は確かミカン狩りですよ」
岳人:「そーだっけ?」
忍足:「なんや、氷帝学園も意外と庶民的な学校行事もしてんねやん。ミカン狩りやったら俺もしたで。あと芋掘りもしたわ」
宍戸:「俺もしたぜ芋掘り。あーいうのってよ、見た目じゃどれが甘いかわかんねーから選ぶとき結構迷うんだよな」
岳人:「俺、得意だぜ。甘いヤツ見分けるの」
跡部:「ミカンの狩りだのなんだのって、何だ一体?」
忍足:「なんや跡部、ミカン狩り知らんのか自分。ミカン畑行って、みんなで採って食べるレジャーや。イギリスにはないんか、そういうレジャーは?」
跡部:「ねーよ。しかし畑に行って採るんなら、それはレジャーじゃなくて農作業だろう」
忍足:「時間制限付きで入場料を払って採るんやから、農作業とはちょっとちゃうなぁ」
岳人:「あの自分で採るってのが、妙にテンション上がって楽しいんだよな」
跡部:「ふうん……日本の狩りはフルーツがメインか。なかなかおもしろそうじゃねーか。……明日は土曜日か、おい樺地、携帯よこせ」
樺地:「ウス」
忍足:「……多分お前が今頭ン中で想像してるのと俺らが言うてるのとはだいぶ違ごてると思うけど、まあええわ。――ちなみに跡部、一応聞いとくけど、自分、ナニ狩りに行くつもりや?」
跡部:「ミカンの狩りだ。イチゴ摘みはやったことがあるからな」
岳人:「なんで春にミカン狩りなんだよ。ミカン狩りは秋だろうが! ンなことも知らね―のかよ」
宍戸:「つーか、へんなとこに“の”、付けんじゃねーよ」
跡部:「うるせーよてめーら。日本の狩りはしたことがないって言ってるだろうが。――だったら今は何の狩りができるんだ? 挙げてみやがれ」
忍足:「そうやなぁ、潮干狩りはまだ早いし……なんか他にあるか?」
日吉:「山菜採りか筍掘りですね」
跡部:「たけのこ……?」(首をひねる
忍足:「今日自分が昼食うた学食の“春の氷帝弁当”に入ってたやろ、筍ご飯。アレや」
跡部:「ああ、アレか。ふうん……たけのこの狩りか……まあいいだろう」
忍足:「ふうんて跡部、念の為にもひとつ聞いとくけど、自分、ナマの筍見たことあるか?」
跡部:「ない」
忍足:「…………そや思たわ」(がっくり
岳人:「マジで!?」
跡部:「氷帝弁当のアレがたけのこなんだろ?」
岳人:「全然違げーよ!」
宍戸:「……相変わらずズレたヤローだぜ」
鳳 :「(こそっと)……宍戸さん、跡部さん筍見たことないのに、一体どうやって筍掘りをするつもりだったんでしょうね?」
宍戸:「俺が知るかよ」
日吉:「狩り以前の問題ですね」(ボソ
跡部:「…………」
忍足:「…………もうええ、わかった跡部。俺が筍の見本やるから、明日それ持って行き」
跡部:「たけのこってヤツは、そんなに簡単に手に入るのか?」
忍足:「まぁな。“たけのこ○里”言うねんけどな。……とりあえずそれで間にあうやろ」
岳人:「あー帰ろ帰ろ」
おわり。
2009/05/13